新宿ゴールデン街で飲み明かした。家に帰ったのが朝の八時半。煙草のべったりした匂いとなまり玉のような酒の余韻を抱いたまま、ベッドに倒れ込んだ。
起きると、三時くらいだった。ひどい二日酔いだった。
「なんかおなかに入れないと回復しないわよ」といって、母が塩ラーメンを作ってくれた。
母「ノンフライだから」
僕「ごめんなさい」
居間のソファでぐったりしながら、ふすま続きになっている台所の母を眺めていた。背中すがただった。母はもくもくと塩ラーメンを作っていた。
くつくつという小鍋の音を聴いて、湯気に包まれる母のすがたをぼんやりと眺めていたら、急に、ぼろぼろと涙が落ちてきた。声まで出そうになってしまった。
泣くことなんて久しぶりだった。